東京タワー斜塔説
東京タワー が曲がって見える・・・とアマチュアカメラマンの間で、言われている。遊覧コースでは絶好の被写体。
東京見物の記念にパチリとおさめると、あの大きな図体で、なかなか直立に収まらない。レンズの屈折、手に持ったカメラの水平位置のせいかも知れない。
ところが、西側の魚藍坂あたりから眺めると、少し右側に傾いて言えるという人がある。
映画や小説の舞台に使われて、このところ人気が盛り返している 東京タワー が開業したのは、昭和33(1958)年の昨日(12月23日)のことだった。
これは開業から約1年を迎えた頃の記事だが、こんな噂が流布していたのである。
「午後の日差しで見ると 東京タワー の左側に太陽が当たり右側に影が出来るので左右対称がくずれて、右側に傾いて見える」
「東京では地平線が見えないためと、芝公園の森の木立に起伏があり人間の目がこの起伏に仮想の地平線を考えるために 東京タワー が曲がって見える」
何ていう、ちょっと難解な理屈をこねた”錯覚説”が二つ紹介されている。噂を打ち消すため、以下のような科学的な測定が行われることになったそうだ。
「展望台をのせた塔の本体(252メートル)には総計27本の横ケタが通っているが一本ごとに中心にセンターポンチがあり、完工時には白ペンキで上下に垂直線の目印がしてあった。その後塗装してこのペンキの中心線が隠れたの目下、ポンチを頼りに中心線を出して、幅1センチの白いビニールテープを張り、これを地上からトランシットで測って塔の上から下までこのテープが垂直につながって見えればOKというわけである」
と、何だかわかったようなわかんないような説明だが、6日の紙面に小さくその報告記事が載っていた。

■「日本電波塔株式会社では、4日トランシットを使って、東京タワー の測定を行う準備を進めていたが、塔の横ケタ27本に、それぞれ中心線のテープをはるのが予想外に大工事となるので、測定は一応延期することになった」
いったい 東京タワー は傾いていたのかどうなのか・・・その後の縮刷版を当たったが、”続報”を見つけるとは出来なかった。
ウヤムヤにされてしまったのかと思っていたら、ちゃんと測定は執り行われたようだ。先日手に入れた「東京タワー99の謎」(二見文庫)という本にこう記述されている。
「現在はレーザーにより、建物の水平、垂直の検査は簡単に出来るが、昭和30年代はまだそんな技術はない。トランシットという測量機器や、下げ振りと呼ばれるおもりを使い、傾きの検査がお行われた。そして、導き出された軽度は4千分の1ということだった」
ま、曲がっていたことは確かなようだが、これは建築的には微妙な誤差といえる数値で、目前で確認できるレベルのものではない。
(もしや、ちょっと目を離したスキにググッと傾いたりする習性があったりするのかもしれないが・・・)
■ともかく、開業してまもなくこういった噂が流れるとは、当時の 東京タワー に寄せる人々の関心の強さがうかがいしれる。
やがて建設される 新東京タワー の際にも、「ビミョーに曲がっている」なんて言い出す人がいるに違いない。
(12月24日付朝日新聞 東京地域版「泉麻人の東京版博物館昭和34年12月2日付」より)
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