◆夫婦は対等なはずなのに、夫を「主人」と呼ぶのはおかしい。
10月6日の言いたい欄で紹介した投書に対し、120通を超える反響が届いた。
多くが「同感」という意見。ただし、以前から「主人」と呼ぶことに感じる人が多いものの、話し相手の夫をどう呼ぶかでは、なかなか適当な呼び方が見つかっていないようだ。
以下、10月22日付朝日新聞「生活」欄
の記事よりご紹介です。
■「主人」に疑問
結婚してから、「主人」という言葉が気になるようになりました。結婚前は、周りの人が「うちの主人が・・・」と使うのを聞いて、奥ゆかしささえ感じていました。
しかし今は、一緒に生きていくパートナーであって、仕えるべき主人ではないと思い、「夫」を使っています。みなさんはどう思われるでしょうか。
(岡山市 会社員女性32歳)

■「上下関係」感じ、違和感
投書を読んだ千葉県八千代市の主婦(43)も、16年前に結婚して特に意識せずに「主人」と呼んでいたが、徐々に違和感を感じ始めた。
「夫が主人なら、私は召使?」そんな時、周りの人が「夫」と呼んでいるのを聞いて、自分も10年ほど前から使い始めたという。
「同世代は『夫』、上の世代だと『主人』が多い。下の世代は『だんな』も多いように感じます」「主人」という呼び方を「妻よりも立場が上、という感じでおかしい」と思っている人は多い。
横浜市の大学非常勤職員(33)は「結婚生活は夫と妻の協力で成り立つので、どちらが上とか下とかはないはず」。
千葉県我孫子市の主婦(69)は「『主人』と呼ぶのは、男尊女卑を女性自らが認めることになるのでは」。
男性側でも、岐阜県大垣市の無職(64)の方は「家族は同等で、私が家の『主人』だとは思いません。『夫』でいいのでは」。
一方、「主人」容認派の意見は・・・。
埼玉県の主婦(39)は「『主人』という言葉の響きの美しさにひかれて使っています。夫への尊敬と親しみを込めていますが、夫に隷属していいるとは感じていはいません」。
岡山県津山市の自営業(51)の方は「『主人』と呼びますが、ただの符号に過ぎないと思っています。家庭内の実権は私が握っていると自信を持っています。」とする。
■上流層の言葉 戦後広まる
夫を「主人と呼ぶ風潮がひろまったのは、戦後らしい。
文教大の教授が新聞の投稿欄で夫の呼び方を調べたところ、昔は「良人(おっと)」「良夫」など様々で、多いのは「夫」だったが、1950年代頃から「主人」が大半を占めるようになった。
国語辞典の「主人」の項目に、「妻から見て夫を指す」という説明が出揃うのも戦後だそうだ。
◆テレビも一役
昔は使用人などがいる上流階級の家の夫が、家のあるじとして「主人」と呼ばれた。
中流層が広がり、核家族化が進んで世帯主が増え、あこがれも込めて「主人」と呼ぶ妻が増えたのではないか、と推察される。
社宅や団地ができ、新しい近所づきあいの規範が求められる中で、1960年代から降盛するテレビのホームドラマで、妻たちが「うちの主人が」「ご主人は」と話したことも、普及に拍車をかけたという。
対外的に自分の配偶者をどう呼ぶか、日本言語研究所が昨年、全国約2400人の既婚者にアンケートした。
話し相手が自分の場合、妻の場合、妻の7割が自分の夫を「主人」と呼んでいたが、相手が目下の場合は「だんな」が29%で最も多く、「主人」は21%。
呼び方を場面によって使い分け、主人を丁寧表現として使っている人が多かった。夫自身が使って欲しい呼称は「主人」が最多だった。
◆結婚で優越感?
男女平等の観点から「夫を主人と呼ぶべきではない」という主張は、1950年代には始まっている。いまだに根強く使われているのはなぜなのか。
文教大の教授は「そう呼ぶことが、結婚できたとう女性の優越感をくすぐる面があるのではないか。いい奥様に見える無難な言葉と思われ、嫌だと思う人もいる不快語だという認識がなかなか広がらない」と話す。
国立国語研究所言語生活グループの主任研究員は「相手の夫を適切に言い換える敬称がない」と指摘する。
「子供は『お子さん』と呼べるのだから、『夫さん』という言葉が広がってもよさそうだが、『主人』の方が落ち着きがいいのだろう」
「父兄」が「保護者」に言い換えられたり、「主人」という新語が広まったりした例はあり、「自分も使ってみたいと思われる言葉が見つかったら、変わるかもしれない」。
■「相手の夫」呼び方悩む
実際には「夫」と呼ぶというのが一つの意見。
「だんな」と呼ぶ人もが多かったが、栃木県高根沢町の主婦(40)のように「囲われているわけでもなく、違和感がある」との声も多かった。
「連れ合い」「パートナー」「相方」「伴侶」など、妻も夫も使える呼び方を支持する意見も多かった。この他、「うちの人」「パパ」「「夫さん」「夫の名字」「彼」など様々だ。
「公的な場や目上の人に対する場面では『夫』、友人に対しては『だんな』と呼ぶ」という宮城県蔵王町の切り絵作家(63)のように、相手や場面に応じて呼び方を変える人も多かった。
また、「話し相手の夫をどう呼ぶか」で悩むひとも多い。
川崎市の主婦(34)は「『あなたの夫は・・・・』という言いかたはなじまないので、『ご主人』よりはましかなと思って『だんなさん』を使っています」。
八王子市の主婦(63)は「手紙では古めかしい言葉で『ご父君』と書くけど、会話では使いづらいし・・・」とする。
「他に適当な言葉がないので『ご主人』と呼んでいる」という人は少なくないが、千葉県市川市のアルバイト女性(42)は「『あなたのご主人は』と言われるたびに不快になります。私を夫より低い立場と決め付けないで欲しい」と憤る。
「ご主人」に変わる表現がなくて困っている、と言う人が多いようだ。
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