配偶者とされぬ事実婚
東京都内のNPO法人の代表を務める白石さん(40)は、会社員の夫(41)と夫婦別性を続けて13年目。
長い事実婚の中で、婚姻届を出さない妻と夫が、夫婦を対象としたサービスや配偶者向けの制度をどの程度利用できるのか、調べたことがある。
「わかったことは、事実婚は税制では配偶者扱いされない、ということです」 日本の税金の仕組みには、女性が結婚しているかどうかによって、適用が左右される制度がある。
生活の実態は夫婦でも、事実婚だと、医療費の還付申告の際に夫婦で合算できない他、配偶者控除や寡婦控除は適用されない。
相続の際にも、税の軽減措置を受けることができない。 民法が規定する法律婚を前提としているためだ。
白石さんの家庭では昨年、娘2人と夫にかかった医療費が合計10万円を超え、合算して医療費の還付申告をすることにした。
夫が娘たちを認知しているため「同一生計の親族」と見なされるが、「内縁の妻」の白石さんにかかった医療費は合算できなかった。
会社員時代から扶養の枠など気にせず働いてきたこともあり、配偶者控除の「103万円の壁を意識したことはない。
だが、白石さんは一昨年、体調を崩して仕事を一時休んだ。 「休業が長引けば、世帯収入維持のため、夫が配偶者控除の適用を受けた方が良いかも」との思いがよぎった。
結果的には控除申請はしなかったが「年齢を重ねるうちに、怪我や病気、死亡など夫婦の不測の事態には、事実婚のままでは不利」と不安が募った。
「婚姻届を記入して、準備だけはしておこうか?」夫とそんな話をしたのは、最近のことだ。 税制上の不利益を感じる事実婚夫婦がいる一方で、法律婚でも不合理を感じる夫婦がいる。
弁護士の宮岡さんは1995年~97年に、妻で税理士の友子さんと顧問税理士契約を結んだ。
友子さんに支払った税理士報酬を、夫の経費として税務申告したが「同一生計の配偶者に支払う報酬は経費に算入しない」という所得税法56条の規定に基づき、追加徴収された。
処分を「不服として、2001年に提訴。
1審の東京地裁では「独立した事業者としての取引」と認められ勝訴したが、2審、上告審で敗訴した。
「私たちが事実婚の夫婦だったら、報酬の支払いも経費算入できた。
税理士業務への対価を『家計費を渡した』と言われた時にはつらかった」と友子さん。 夫は「法律に、離婚を勧められているように感じた」。
女性の生き方や家族の形が多種多様になった現代。 夫が一家を養い、女性のライフスタイルが画一的だった時代に作られた税制が、きしみを見せ始めている。
政府税制調査会は1月末、税制の抜本改革に向けた中期展望などを検討するため、専門家委員会を設置した。 2年かけて議論し、報告書をまとめる方向だ。 (以下略) (月野美帆子)
(2月13日付読売新聞「女性と税金4」より)
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