一家揃ってや友達同士での初詣で以外は、神社に足を向ける機会が少ない人も多いのでは。 ところが、普通の日にも行列ができる神社が、東京の真ん中にある。 それも女性ばかりの。
「1年前にここで並んだのがすべての始まりでした」 東京飯田橋の東京大神宮。 2日に初詣でに訪れた東京都日野市の新井陽子さん(32)は笑みを浮かべた。
結婚式は4ヶ月後。 縁結びの願いがかなったお礼参りに来たという。 占い師に「31歳で結婚します」と言われたのは23歳の時だった。
大台まで独身なんて。 「26歳で幸せになってみせる」と誓ってはみたが、「この人こそ」と思える相手に出会えなかった。
昨年、独身4人組で訪れた初詣。 縁結び のおはらいを受けた帰り道、元同級生に「一番良いと思う人を紹介して」と頼み込んで、引き合わされたのが今の婚約者だった。
夜景をバックに結婚を申し込まれたのは、くしくも昨年10月の32歳の誕生日の前夜。 「縁結び をお願いしてすぐに巡り合うところがロマンチックでしょ」とはにかんだ。
東京大神宮は、大河ドラマ「篤姫」で主役を演じた宮崎あおいさん(23)が2007年夏に挙式し、「縁結びの神様」ともてはやされるようになった。
さい銭箱の前に一人ずつ進み出て、じっくりと願い事をするから、行列は約30メートル離れた鳥居まで伸びていく。
白むく姿の花嫁が境内を横切ると、並んだ女性たちからため息がもれる。 東京都小平市の銀行員井関明子さん(43)も、かつて行列の中にいた。
昨年の流行語にもなった「アラフォー世代」。 都内の短大を卒業後、親の勧めに従って地元・愛媛県の銀行に就職した。
学生時代に吸った都会の空気が懐かしくなり、5年後に希望して東京支店に転勤。 毎年のように海外旅行もし、独身生活を楽しんできたが、気がつくと40歳になっていた。
大神宮に通って2年目の昨年10月。 以前、お見合いをして悩んだ末に交際を断った男性に、連絡してみようという気になった。
自然体でいられる相手だなと思い始めた頃、プロポーズされた。 再会から1ヶ月半。
「焦った時期もあったけど、自分に合う人を待っていて良かった」 今、縁の不思議さを実感している。
縁結び を願うのは、適齢期を迎えた女性の専売特許ではない。 千葉県の派遣社員のヒロコさん(仮名)は50歳。
先月初め、恋心で胸がズキズキと痛み、思わず大神宮に駆け込んだ。 その8ヶ月前、30年に及ぶ結婚生活にピリオドを打った。
20歳で「できちゃった婚」。 パートも習い事も許されない生活がだんだん息苦しくなった。 2人の娘が社会に出たのを機に、「あなたから卒業させて下さい」と切り出し、熟年離婚を選択した。
最近、年下のある男性が気になる。 すっかり忘れていた胸のときめき。 電話ももらえず、「もうこちらから連絡しません」とメールですねたりしてみた。
「もう一度、ウェディングドレスが着たいんです」。 神さまの前でほおを赤らめた。
元日、2万人の初詣で客が大神宮の境内を埋めた。 新宿区の佐藤朋子さん(31)は、会社の先輩から「5年お参りすれば願いがかなうよ」と言われて通い始め、今年がその5年目。
先月13日にもお参りしたばかりだが、合わせる手にも自然と力がこもる。 おみくじをひくと大吉。
平安時代の歌人・紀貫之が詠んだ和歌が添えられていた。
世の中は
かくこそありけり
吹く風の
目に見えぬ人も
恋しかりけり
(男女の縁とはこういうものだったのですね。
風のように姿を見ない人にも恋するものなのです)
「今年こそ運命の人に出会えそう」
赤い糸をたぐり寄せるのは神さまではなく、彼女たちの必死の思いなのかも。
(1月4日付け読売新聞「並んで並んで 2」より)
関連情報: 「縁結び神社」 「恋愛運が上がる」
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