しのびよる「車離れ」
自動車が国内で売れなくなっている。 2007年の新車販売台数は3年連続で減り、軽自動車を除けば35年前の水準にまで後退した。
保有率は2001年をピークに下降し始めており、既に「クルマ離れ」の兆しが表れている。 特に若者で車を持たない割合が増えていることから、将来の需要がジリ貧となることを恐れるメーカーの悩みは深い。
「デートの必需品」が「割り高な移動手段」に
「車がなくても不便はないし、今後もずっと運転免許を取るつもりはありません」
自動車メーカー出身で、あるシンクタンクの幹部(57)は、地域交通を考えるシンポジウムで2007年に出会った京都大学の男子学生の言葉が忘れられない。
「昔は、取り合えず免許は取っておく、というのが社会常識だったのに……」 「デートの必需品1%」。
中古自動車買取り大手「ガリバー」の自動車研究所が2006年4月に発表したアンケート結果は驚きをもって受け止められ、雑誌などにも引用されてきた。
恋人と2人きりで移動できる車にあこがれた40代以上の世代には、「1%」という数字が信じられない。
同じ幹部は「昔はクルマさえあれば女の子がヒョイヒョイついてきたもんだがなあ」と、ため息をついた。
「自動車に対する関心・興味は?」との問いに、最も多かったのは「単なる移動手段」という選択肢を選んだ人で、全体の44%。
2007年9月、同研究所が同じく18~50歳代の男女千人に今度は「複数回答」で聞いたところ、やはり「移動手段」が最多で52%、「デートの必需品」は6%で、ほぼ最下位という順位に変わりがなかった。
20代までに限っても、「移動手段」が43%で、「デートの必需品」は15%に過ぎない。
研究所の鈴木所長は「今の市場は需要が多いミニバン、コンパクトカー、軽自動車が圧倒的。
スポーツカーなど デートカー は少なくなり、かつて若者を引きつけたような個性的で魅力的な車が少なくなったのも要因ではないか」と分析する。
「単なる移動手段」と見られてしまえば、車も電車やバスなど公共交通機関と同じ土俵の上で「費用対効果」によって比較されるのみである。
日本自動車工業会が「車を持たない人の理由」を調べた。 1位は「価格・維持費など経済的な理由」で55%。次いで「保管場所がない」が40%だった。
演出家のテリー伊藤さんは2007年11月に出版した『クルマの税は高すぎる』の中で「買って税金、持って税金、走って税金、走らなくても税金」と書いた。
今国会で懸案のガソリン税など車にかかる様々な税金も含めたコストを勘案すれば、「他の交通機関の方が便利」(30%)という「持たない理由」もうなずける。
もっとも、こうしたクルマ離れは、地下鉄などが充実した都市部に顕著な傾向だ。東京圏ではバブル崩壊で90年代半ばに転出超過になったが、再び転入超過が続く。
2007年は転入が15万人も上回り、20年ぶりという高水準だった。 東京都文京区に2002年完成したあるマンションは地下鉄4線が利用できる。
全戸の半数に当たる40台の駐車スペース(月3万4千円~)を備えるが、15台が空いたままだ。 自動車を買う必要がない人口の増加が、クルマ離れを加速させていることは間違いない。
保有コストがかさむ上にガソリン価格高騰が追い討ちをかける。 代替する交通機関が十分でない地方では止むを得ず車を持ち続けるケースも多く、生活を直撃している。
(2月16日付け朝日新聞「be report」より)
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