教会? いえ結婚式場です
さほどキリスト教徒は多くないはずの日本で、教会風の豪華な建物が目につくようになった。 ブライダル業者が造る 結婚式専用の教会。
白いドレスの花嫁の美しさを引き立たせる舞台装置として根強い人気がある一方、周囲の景観となじまず違和感があるといった指摘も出ている。
◇「礼拝させて」外国人は勘違い 「聖堂」工業地帯・住宅地にも
愛知県豊橋市のJR豊橋駅から車で15分。 高さ51メートルの尖塔は新幹線からでも確認できる。 東海地方の冠婚葬祭業大手、平安閣の結婚式場「ウェディングカルティエ・マリエール豊橋」だ。
茶色い外壁に囲まれた内側は、石畳や古びた街灯などでヨーロッパの古都を模した別世界。 「サン・パトリス・大聖堂」がそびえる。
収容人数150人、バージンロードの長さ30メートル、天井までの高さ27メートル。 結婚式用の教会 としては、国内最大級の規模を誇る。
色ガラスをはめた丸い薔薇窓などゴシック様式の特徴を備え、全体的にはドイツのケルン大聖堂のイメージという。
木彫りの祭壇やステンドグラスは19世紀に英国の教会で実際に使っていたので、「『礼拝させて』とやってくる外国の方もいます」と支配人は笑う。
しかし、信者が集まって祈りをささげることはない。 宗教法人が建てた正式の教会ではなく、牧師を派遣してもらって式を挙げるカップルのためだけの教会だ。
業界関係者によると、こうした建物が出現し始めたのは約10年前。 若いカップルの人気を呼び、建設が続く。
ただ、周りの風景にそぐわないと指摘されるケースも増えている。 名古屋市では、化学プラントなどがひしめく臨海工業地帯に忽然と現れる。
山口県のJR下関前には、圧倒されそうな建物ができた。 JR大阪駅近くのホテルを見上げれば、中層階部の当たりにロマネスク様式チャペルが鎮座。
東京・表参道の住宅外にも昨年、尖塔まで地上28メートルの大聖堂が完成し、通りかかる人の度胆を抜いた。
東京都練馬区に住む会社員の男性(31)は2年程前、実家に近い愛知県小牧市の「大聖堂」で式を挙げた。 パリのノートルダム大聖堂に似た外観で尖塔は高さ40メートル。
外国人牧師に導かれて誓いの言葉を交わした直後、日本人聖歌隊が力いっぱい英語のゴスペルを歌い出した時、どうしようもない違和感に襲われた。
「これでは僕は大がかりなコントの出演者みたい」
教会は、あくまでも新婦のドレスを姿を美しく見せるための「器」。
「新郎の僕は無宗教。作りこみ過ぎとしか思えず、笑いを押し殺すのに苦労しました」
◇花嫁引き立てへ続く進化
リクルート社が94年から実施している「ゼクシィ結婚トレンド調査」によると、日本人の挙式スタイルで圧倒的な人気は「キリスト教式」で2007年は 70% に達した。
次いで「人前式」が15%。 1960年代には8割が選んでいた「神前式」は12%と、今では少数派だ。
教会風建築物を「結婚式教会」と名付けたのは、建築評論家で東北大准教授の五十嵐さん(40)。
愛知県内の大学講師をしていた2003年頃から、当時の大学院生(30)と東海・中国地方を中心に調べて回り、業界事情なども盛り込んで今夏、 「『結婚式教会』の誕生」(春秋社)にまとめた。
2人は、2006年5月時点でキリスト教式が可能な「独立型の教会」が全国に589件以上あると算出した。
うち427件にはステンドグラスがあり、375件はパイプオルガンを備えていた。 「教会らしさ」を醸し出す重要アイテムらしい。
西洋建築史の観点から独自に分類したところ、薔薇窓や先端を尖らせた「尖塔アーチ」など三つの要素を持つ典型的なゴシック様式が169件、擬似的ゴシックが99件とゴシック系で3分の1以上を占めた。
天井の高さとバージンロードの長さが10メートル以上だったのは133件で、ウエディングドレスをより美しく見せ、参列者もショーのように楽しませる空間に。
ドレスの長いすそを強調して撮影できる階段があるバロック風なども多かった。
2人は、本来の教会が周囲に紛れてしまうほど地味な建物も多いのに、結婚式教会 は「花嫁をいかに美しく見せるか」に1点にこだわって進化し続けていると指摘。
五十嵐さんは「素材の真正さや『らしさ』のみを重視する虚構の商業空間。 日本人の宗教観を物語る」と話す。
結婚情報誌の影響も見逃せない。 代表格は93年登場の月刊誌「ゼクシィ」。 式場を写真付きで紹介し、非公開だった施設の価格も掲載。
発行30万部と今も結婚を控えた女性に支持される。 「読者にとってあこがれの挙式ができる建物として結婚式教会は増えていった」と編集部は解説する。 (高橋美佐子)
(12月30日付け朝日新聞生活欄より)
「結婚情報ニュース トップ」へ戻る
東京銀座で結婚できるスタートライン TOP