職場で知り合ったアルバイトの女子高生と深い仲になり、
淫行 の罪に問われた男性には、妻子がいた。
◆互いの感情、真剣と認定
しかし、法廷で「真剣な交際だった」と訴えた。判決は無罪。「恋愛」と「みだらな行為」の線引きはどこにあるのか。
(以下、6月3日付朝日新聞 社会面「もっと知りたい」より)
◆これまで
名古屋簡裁は5月23日、17歳の少女との性行為で愛知県青少年保護育成条例違反(淫行 の禁止)の罪に問われた男性に無罪を言い渡した。
同条例は「何人も18歳未満の青少年に対して 淫行 またはわいせつ行為をしてはならない」と定める。
同様の条例は長野を除く全都道府県にあるが、対象を「不当な手段」による性行為に限定する条例もある。
昨年2006年2月、居酒屋チェーンの副店長になった愛知県の男性(32)は接客係のアルバイト少女(当時17)と知り合った。
「てきぱきと働き、笑顔も良く、勤務の空き時間におしゃべりをするうち次第に好きになっていった」
(公判で男性の陳述)
関係が深まったのは同年5月頃。キタキツネと少年の交流を描いた映画「子ぎつねヘレン」を見に行き、感動して泣いた少女に好意を抱き、帰りの車中でキスをした。
その後、頻繁にメール交際やデートを重ねた。6月以降7回、名古屋市内のホテルで少女と関係を持った。
7月、少女の母親が少女を問いただして交際が発覚。男性は自宅を訪れて謝ったが、母親は許さなかった。
母親に伴われた少女側が8月下旬に被害届けを出し、男性は瀬戸署に県青少年保護育成条例違反(淫行 の禁止)の疑いで逮捕された。
取調べでは容疑を認め、いったん略式起訴されたが、男性側は「真剣な気持ちで付き合っていた」として無罪を主張。正式裁判に移行した。
「恋愛」と「淫行」の境目はどこにあるのか。1985年の最高裁大法廷判決が、その大枠の基準を示している。
それによれば、「淫行」は性行為一般を指すものではない。
①青少年を誘惑、脅迫するなど不当な手段で行う
②単に自己の性的欲望を満足させるための対象としているとしか認められない、の2類型に絞られる。
処罰範囲が不当に広がることに枠をはめた。相手の女性が一定年齢未満なら直ちに淫行、となるわけでもない。
今回、主に争点となったのは②の部分だった。
名古屋簡裁の裁判官は、この判例を基に違法性を検討して判示した。
「世上言われる妻子ある男の浮気、不倫であり、道徳的に非難されるべきことには異論がない」
だが、「それゆえに直ちに『単に自己の性的欲望を満たすだけの目的』の交際だったとまで言いきれない」理由はこうだ。
①一定期間付き合いがあり、双方に恋愛感情が生じ人格的交流があった
②少女は、妻子ある男性と承知しながら、合意の上で性行為に至った。
少女は警察の調べに、「一緒にいて波長が合う」
男性に電話して「母に連れられて被害届を出したが、、私の方から出すつもりはなかった」と話していたとの事実も、判決で認定された。
検察側が「上司の立場を利用して関係を迫った」とも主張したが、判決は、互いに恋愛感情を抱いていたと認定して検察側の主張を退けた。
民法では、女子は親権者の同意があれば16歳から 結婚 できる。
そのことも考慮しなければならない、と判決は説いた。
近年の 結婚観 や 男女交際観 の多様化を挙げ、「『結婚 を前提としない』ことだけを取り上げて真摯な交際でないと断じることは難しい]とも指摘している。
法曹関係者によると、条例違反(淫行)罪での無罪は極めて異例。「妻子持ちなら淫行に問える」という捜査現場の常識を覆す判決に、検察側は控訴すべきか検討を続けている。
事件当時、男性の妻は2人目の子を妊娠中で、公判中に出産した。男性は、逮捕を機に少女と別れ、冷えてしまった夫婦関係を修復中だという。
「彼女との関係は思い出として胸の中でいつか小さくなっていく。だが、妻との関係、2人の子どもは、これから確実に大きくなっていく」
裁判官はそう説論した。
(以上、6月3日付朝日新聞 社会面「もっと知りたい」より)
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