◆インドでは、依然 見合い結婚 が主流だ。双方の親同士が決め、当人は挙式の当日まで相手の顔さえ知らないケースも多い。
ヒンズー教徒の婚礼では、新婦は新郎から、額の髪の生え際に赤い粉を付けてもらい、新郎への貞節を誓う。
披露宴では、親戚や知人が集まり、大いに金を使って夜通し踊る。
カースト制度の影は今も色濃い。
教徒の規範、「マヌ法典」は、結婚 は「同一カースト同士」と定める。
法律では、男性は21歳から、女性は18歳から 結婚 できる。農村部では、労働力確保の思惑から10歳代前半の嫁を迎え入れ、家事などで酷使する例も多い。
◆進まぬ女性の地位向上
ニューデリーに住む税理士、マニシュ・チャンドリアさん(26)は、自分の目の前で起きたその出来事が今でも信じられない。
5年越しの恋を実らせた妹のムクタさん(23)を、婚約者 の男性(26)が挙式の前日に5階建て自宅アパートの屋上から突き落として死なせたのだ。
「2人の争う声がしたので屋上に駆け上がると、男の張り手を浴びた妹がすっと消えた。男の手には、妹が巻いていたピンク色のスカーフが握り締められていた」
ムクタさんのサンダルが脱ぎ捨てられたままの屋上で、
兄のマニシュさんは沈痛な面持ちで語った。
口論の原因は、結婚 時に女性が嫁ぎ先へ金品を納める
ヒンズー教の慣習「ダウリー」(持参財)だ。
4月28日深夜にチャンドリアさん宅を訪ねた婚約者とその母親は、マニシュさんが贈った家具類が「安すぎる」と文句をつけ、「事業を興す資金にする」と言って50万ルピー(約130万円)の現金を要求してきた。
婚約者側の強欲ぶりに憤慨したムクタさんは「もう 結婚 したくない」と言って屋上に駆け上がった。
後を追ってきた婚約者の手で若い命を散らせた。婚約者とその母親は、殺人と 持参財 強要の容疑で逮捕された。
持参財 の支払いは、実は1961年に施工された法律で禁止されている。
しかしマニシュさんは、国内の多くの花嫁の家族と同様に、「妹が嫁ぎ先でつらい目に遭わないための必要経費」と割り切って身銭を切ることにしたという。
マニシュさんは言う。「僕が 結婚 する時は、ダウリー欲しくない。世間の人々も、ダウリーが妹を死に追いやった事実をかみしめて欲しい」
◆「男性に服従当然」根強く
花婿の母が、かつて自分が受けた仕打ちへの報復のように、花嫁の家に 持参財 をせびる。
国連児童基金(ユニセフ)などで半世紀近く女性問題に取り組んできたぴにた・ナガルさんは、「女の敵は女、という悲しい現実がある」と指摘する。
ナガルさんは、持参財 だけでなく、夫を亡くした妻に殉死を求める「サティー」や寡婦の再婚禁止などの、女性に服従を強いるヒンズー教の女性観に基づく慣習の根強さを嘆く。
(5月25日付読売新聞「興隆インド 第2部 超大国への青写真」より)
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