◆モテるのは「聞き上手」
男性社会で生きるOLたちを主人公にした「女ちのジハード」など男女の心模様を描いてきた直木賞作家の篠田節子さん(51)は、「男らしさ」とは「大人らしさ」ではないかと指摘する。
「男らしさ とは何かと聞かれたら、勇気、決断力、責任感、リーダーシップなどを思い浮かべます。でも、これって、ある程度の年齢になれば、女性も身につけないといけないことですよね」
結婚 して家庭をもつ。社会人として仕事をする。
求められるのは、男らしさ や女らしさではなく、「自分のことは自分でする」「責任をもつ」といった大人らしさ だ。
高度経済成長の時代は、男は仕事に生きて、女はそれをサポートするという役割分担がハッキリしていた。
「男はこうあれ」という指針もあった。それが今、見直されつつある。男女が協力する形で、よりよい社会を目指そうという方向にはなっている。
ただ、男女の違いが強調されてよい場合もある。
例えば 恋愛 だ。
「むしろ、違いがなかったらつまらない。お互いがその魅力を十分に発揮して欲しいですね」
篠田さんは、相手を理解できない男が増えていることが気にかかる。
「コミュニケーションが取れなくても許されたのは、旧来の社会です」
時代劇を見ていても、「うちのおとっつぁんは口下手だから」と美徳のように認められていた。それは現代社会では通用しない。
必要な時に的確な説明ができなければ、「ダメな男」だ。篠田さんはこうアドバイスする。
「まずはコミュニケーション能力を養って欲しい。モテる男 って、相手の言うことをきちんと聞いてあげられる人。そして、助けて欲しい時に助けてくれる。それができるなら、髪が薄くなったって関係ない」

◆多様な価値観 認めよう
私たちは「女は女らしく」「男なんだから」といった「らしさ」でものを見てしまいがちだ。しかし、人を「らしさ」の枠にくくってしまうと見えるものも見えなくなる。
ネット上のコミュニティ「mixi(ミクシィ)」を運営する笠原健治社長(31)は、それを「もったいない」と表現する。
「自分もくくられたくないですね」
穏やかな物腰から「草食系」と評される笠原さん。ネット上では、男だから、女だからとか、世代が違うからなどということを意識させない。
どれが主流で、何が正しいということでなく、多様な価値観を認め合っている。
その考え方は、会社経営や人生にも通じているという。
◆もっと適当に生きれば
かつて男は「こうあらねば、こうあるべきだ」という原理原則にこだわってきた。
そのこだわりが、さまざまな価値観を持つ今の社会では、自分の生き方を狭め、息苦しくさせる側面も持っている。
「『おじさん』的思考」などの著書がある神戸女学院大教授の内田樹さん(56)は、そうした原理原則にこだわらない生き方を勧める。
「弱い自分をさらし、素でいる方が楽だ。もっと適当に生きればいい」
そのためには、いろいろな物差しで世の中を見ることが大切だという。こだわりを捨て、「いい加減」でいたら思わぬ事態にも対処しやすい。
独りよがりの単一の物差しに頼らないようにしたい。「オレ的にはOK」というのは危うさにつながる。
「その人がよくても周りは認めない」
オレ的な人ばかりでは、社会が成り立たないのだ。
「大人らしさ」「多様な価値観を認める」「こだわらない」・・・。
3人の言葉に、男が現代社会をどう生きればよいのかというヒントがあるのかもしれない。
(1月19日付読売新聞シリーズ「男ごころ らしさを超えて 12」より)
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